tkinuiの日記

見聞きしたものの備忘録

天国と地獄

1963年

黒澤明

 

スコセッシの推薦映画39本というのを見かけてそれを観ている。以下ネタバレあり。

 

 

天国と地獄は人質事件を題材とした映画で、三船敏郎演じる権藤が犯人に身代金を渡すべきか葛藤する前半のあと、特急こだま号で撮った身代金受け渡しの山場があり、そのあと仲代達矢演じる戸倉警部が物語の中心になって犯人を追い詰めていく。身代金を投げるときの三船の演技の迫力がすごいのもあって、前半と後半のつながりがあきらかに弱い。どうも前半は原作があるらしく、後半は黒澤の創作らしい。なるほど。

で、前半の緊張が切れて、なんとなく眠くなってきたところで、山崎努演じる犯人が、ヘロインの効き目を試すためにドヤ街の薬中の女に試し打ちさせるのだが(どうでもいいが2008年のWカップの川島以来「ドヤ顔」なる言葉がはやりだしたとき、最初僕は「ドヤ」をドヤ街のドヤだと勘違いしていて、ドヤ街っぽい顔ってどんなだろうと不思議に思っていた)、このドヤ街のシーンが非常に良い。ドヤ街というと「あしたのジョーの」の薄汚れてはいるが牧歌的なイメージしかなかったのだが、このシーンを見るとそんな愉快なものではないということがわかる。明らかに体を売って日銭を稼いでいる女たちが陰鬱な面持ちでたむろしており、中にはヘロインの禁断症状でおかしくなっている者もいる。

犯人が権藤に一方的に恨みを募らせて、ほとんど気が違っている様子にも、時折ニュースで流れる理解の及ばない犯罪の当事者たちについて考えさせられるものがあるし、なるほど面白い映画であった。

 

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